立教大学大学院人工知能科学研究科 教育研究スペース

立教大学大学院人工知能科学研究科 教育研究スペース

発想力を刺激する、学生の多様性。
万全の学習環境が整ったAI専門大学院。

日本初の人工知能(AI)に特化した大学院研究科「人工知能科学研究科」。文系・理系を問わず、多様な経歴の学生が意欲的に学んでいます。コロナ禍の最中で大学院進学を考えたときに気になる、学ぶ環境としての人工知能科学研究科の印象や、AIの勉強を通じて得られたものなどについて在籍学生にお話を伺いました。

※インタビューの内容は取材時点(2021年3月末時点)のものです。

AIを学ぶ理由、「人工知能科学研究科」の第一期生にお話を伺いました。

プログラミング初心者で、1年次にスマホゲームを開発

紙谷由美子さん(43歳)
出身校:東京女子大学文理学部数理学科/立教大学大学院ビジネスデザイン研究科
現在の職業:WEB広告会社経営

——人工知能科学研究科で学ぼうと思った理由は?

立教大学大学院ビジネスデザイン研究科在学中の2006年、WEB制作や経営コンサルティングなどを行う会社を立ち上げました。それから15年が経ち、今、AIを学ぶことがこれから先のビジネスに必ずプラスになるとの思いで入学を決意した次第です。立教大学の校風や自分の目的に合わせて学べるカリキュラムにも惹かれ、MBAとAIの2つの修士号を目指して大学院生活をスタートしました。

——実際に授業を受けてみて、どのようなことを感じましたか?

それまでプログラミングの経験もあまりなく、授業についていけるのか不安もありましたが、初学者向けのPythonプログラミングや文系向け数学講座などの事前学習会もあり、とても助かりました。また、自らプログラミングを行うことで、AI開発におけるエンジニアの作業内容や苦労、実現可能な開発はどういうものなのかなどを体感できたので、見える世界もグンと広がりました。

——どのような研究をされたのですか?

ゲームAIのスペシャリストでもある三宅陽一郎先生の指導のもと、1年次は研究の土台となるスマートフォンゲーム(パズルゲームを50面)を開発し、特設サイトも公開しました。
WEB制作を手がけてきた経験から、プロトタイプで終わらせるのではなく実際にiOSとAndroidでのリリースにこだわりました。とはいえ、何もかも初めての領域で、正直、途方に暮れることもしばしば。そんななか、1年次の3月に行われた研究成果報告会では、最優秀賞をいただくことができました。

——他の学生とはどのようにコミュニケーションされていますか?

共に学ぶ仲間として、学生同士のコミュニケーションは学業を続けるうえで大きな力になっています。特に、20名程度でグループ分けられた「ハウス」のメンバーとは授業や課題で分からないところを質問したり、有志で勉強会を開いたり、オンライン飲み会を開いたりと、ZoomやSlackを活用しながら互いに励まし合うことが多いですね。当研究科は社会人学生も多く職種も多種多様なので良い刺激になっています。

——紙谷由美子さんは会社経営と子育てをしながら勉強されているそうですね。

4歳の娘がいるので、時間はいくらあっても常に足りない状況です(笑)。ただ、授業は平日の夜間と土曜が中心ですし、Slackを使えば時間や場所に縛られず情報交換できますから、仕事や子育てをしながら大学院で学ぶことは決して不可能ではないと思いました。勉強は、やりたいと思ったときが始めどき。なにより、40代になってからの学び直しは想像以上に大きな価値があると身をもって実感しています。

——大学院で得た知見を今後どのように活かしていきたいですか?

目まぐるしくビジネス環境が変わっている今、DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現が企業の最重要課題の一つになっています。大学院で学んだデータサイエンス、AI、ソフトウェア開発経験と、今まで800件以上の多種多様な企業の広告制作、課題解決をしてきた実務経験を活かし、ビジネス×テクノロジーの両軸からお客様を支援できるAIコンサルティング事業を立ち上げたいと考えています。

ここには本当の「生涯学習」がある!

西村隆さん(57歳)
出身校:京都大学工学部
以前の職業:株式会社毎日新聞社 記者(編集委員)

——人工知能科学研究科で学ぼうと思った理由は?

新聞社の記者として様々な分野の記事を書いてきました。そのなかで、世の中を知る手がかりの一つとしてAIに興味を持ち、3年前から本を読んだり講座に通ったりして自分なりに勉強を進めていました。
当研究科のことを知り、「ここで勉強したい」と強く思い、会社の早期退職制度に手を挙げて受験に臨みました。一番惹かれたのは、理系だけでなく文系出身者も積極的に迎え入れるということ。文学やアートを切り口としてAIについて学べるのではないか、そういう先生や学生が集まるのではないかという期待がありました。AIという未来の技術について、エンジニアやテクノロジーとは遠いところにいる人たちと一緒に学ぶ。AIそのものより、AIに関わる人間のほうに興味のある私にとって、多様な人たちと時間や空間を共有できることは大きな魅力でした。

——実際に授業を受けてみて、どのようなことを感じましたか?

当然のことながら、3年間の独学とは明らかに違いました。AIに携わる一流の先生方が、初めてAIを学ぶ人にも理解できるようにやさしく噛み砕いて教えてくれる。今まで分からなかったことが理解できるようになったことも含め、大きな手応えを感じた1年でした。
一方で、AIはじつに様々な分野に関わるテクノロジーで、自分の研究内容を考え直すきっかけにもなりました。30年前に広島で記者生活をスタートし、日々の取材と暮らしのなかで学んだのは、科学技術の最悪の結果である被爆の実相と、原子爆弾に関わった科学者の役割と責任です。AIの未来も、関わる人間の手にかかっていると思います。
AIを人のために役立てるにあたり、科学者が考えなくてはならないことを追究していきたい。そのためには学ぶべきことがまだまだたくさんあり、先生にアドバイスをいただきながら納得のいく研究テーマを模索しているところです。

——他の学生とのコミュニケーションは?

コロナ禍ということでなかなかリアルに会えないのがもどかしいのですが、期待していた通り、様々なバックグラウンドを持つ方々と交流する機会を得ました。1期生では私が最年長で、世代を超えて仲間と共に学べるのはとても楽しく刺激的です。
ここには本当の「生涯学習」があります。できれば同年代の人たちにも、もっとたくさん入ってもらいたいですね。

——大学院で得た知見を今後どのように活かしていきたいですか?

当研究科で1年間勉強してみて、AIは一言では説明できないことがよく分かりました。明日誰かが新しいAI技術を見つけたら、明後日にはAIの定義がガラッと変わっても不思議ではない。そのくらいAIの可能性は無限です。車だって、運転を学ぶために教習所に通って、一歩間違えれば事故を起こして人の命を奪ってしまう。そのことを理解したうえで社会に受け入れられているわけです。AIにもそういうプロセスを作る必要があるのではないか。そんなことを考えながら今後も勉強を続けていくつもりです。

ゲームAIの強化学習を実社会で応用したい

平栗義貴さん(23歳)
出身校:早稲田大学基幹理工学部機械科学・航空学科

——人工知能科学研究科で学ぼうと思った理由は?

大学在学中から大学院に進もうと考えていましたが、同じ理系でも今まで学んできた機械科学とは違う分野に挑戦したいと思っていました。そんなとき、就職活動中の同級生たちから多くの企業がAIの活用を視野に入れているという話を聞き、第4次産業革命のカギになるともいわれているAIについてきちんと学んでおこうと思ったんです。また、日本初のAIに特化した大学院ということで、前例にとらわれず自由な発想で好きなことにチャレンジできそうだというイメージもありました。
とはいえ、当時のAIに関する知識といえば「何となくすごそう」という程度(笑)。「AIを活用してマーケティングをしている」という話を聞いても、何をどう活用するのかさっぱり分からないというところからのスタートでした。

——入学後、どのようなことを研究しましたか?

個人的な研究として、強化学習を用いたゲームAIの制作に取り組んでいます。内容は、私の好きなサッカーを題材に、どのような目標(報酬)を与えればそれぞれの選手(エージェント)が効率的に動けるのかを考えるというもの。試行錯誤の連続ではありますが、毎週、先生が勉強会を開いてくださるので、分からないところは都度相談しながら研究を進めているところです。「焦らず地道にやればいい」という先生のアドバイスも心の支えになっていますね。
これと並行して、1年次にはグループ研究も行いました。メンバーは1グループ5〜6人で、グループごとにテーマを決めて共同で論文を仕上げました。私のグループは皆さん社会人で、業種も年代もさまざま。ディスカッションでは多角的な意見が飛び交うなど、多様な価値観を持った人たちと一緒に一つのテーマを突き詰めていく作業は非常に有益で楽しかったです。

——コロナ禍での影響は?

授業はすべてオンラインでしたが、Slackを使って先生や事務局、学生とスムーズかつ活発にコミュニケーションできました。質問や相談へのレスポンスも早く、授業や課題のことはもちろん、「明日学校で一緒にランチしませんか?」といった雑談レベルの会話まで気軽にやりとりしています。コロナ禍でなかなかリアルに会えないぶん、こうしたコミュニケーションツールはすごく有効ですね。皆さんも積極的に活用していて、学科全体がまとまっている印象を受けました。

——大学院で得た知見を今後どのように活かしていきたいですか?

研究テーマでもあるゲームAIの強化学習を応用・発展させて実社会に落とし込めれば、もっと合理的に仕事ができるようになり、社会全体がハッピーになるのではと思っています。私は現在、就職活動中でIT系のほか金融業界にもエントリーしているのですが、例えば信託銀行なら顧客情報を活かしてお客様の利益を上げるアルゴリズムを作ってみたいですね。採用担当の方々も、私が大学院でAIを学んでいることに興味を持ってくださり、企業のAI人材に対する期待値を肌で感じています。

卒業後はディープラーニングの謎を解明したい!

立浪祐貴さん(32歳)
出身校:立教大学 理学部 数学科
北海道大学大学院 理学院 数学専攻
現在の勤務先:株式会社スカラ(ソフトウェアエンジニア)

——人工知能科学研究科で学ぼうと思った理由は?

システムエンジニアとして、医療画像をAIで解析してガンの発見につなげる研究のお手伝いをしたんです。これをきっかけにAIに興味を持つようになり、勉強できる場を探していました。ただ、社会人向けの短期スクールだと上辺だけで終わりそうで、深く学びたいという私の目的からするとちょっと違うかな、と。そんななか、母校でもある立教大学の大学院にAI専門の研究科が新設されることを知り、ここなら働きながら本格的に学べそうだと思って入学を決めました。

——研究テーマについて教えてください。

タイトルは「フローベース生成モデルの学習安定手法」。生成モデルは精巧なマルチメディアデータ生成に成功しています。その代表例が顔画像生成で、私はフローベース生成モデルをいかに安定させるかを研究しています。応用的な研究をしている学生が多いなか、あえて今の会社ではできない基礎的なテーマを選びました。先生が方向性などを適宜アドバイスしてくれるのでとても助かっています。先生方の研究室がガラス張りのデザインなので、気軽に入りやすいのもいいですね。

——他の学生とはどのようにコミュニケーションされていますか?

コロナ禍ということもあり、普段はSlackを使って情報交換しています。私は理系出身なので、文系の人から授業で分からなかったところを質問されることも多いですね。チャットで解決しないときは、Zoomを立ち上げて画面共有しながら教えたりすることもあります。オンライン授業が続くなか、学生が互いに協力し合い、共に学んでいこうという前向きな空気を強く感じます。また、いろいろな業種の社会人学生と交流できるのも魅力です。例えば、会計士の方から監査をAIに任せるという話を聞いたときには、「なるほど、そういう使い方もあるのか」と目からウロコでした。何気ない雑談も含め、自分とは違う分野の人たちと知識や情報を交換できるのは、授業と同じくらい有益だと感じています。

——大学院で得た知見を今後どのように活かしていきたいですか?

大学院で勉強してみて、今のAIは特化型で、決して万能ではないことがよく分かりました。例えば、囲碁の対戦には強いけれど他では役に立たないなど、人間のように様々な知識や経験を組み合わせて判断するというところがまだ弱いんです。また、AIのディープラーニングについては謎に包まれている部分が多く、卒業後も勉強を続けながらそれらの謎を解明したいと思っています。同時にAIに詳しくない人たちに対しても、AIをどういうふうに使えばいいのか、どういう技術があるのかといったことを広めていきたいですね。

AI技術を取材や番組づくりに活かしたい

近藤伸郎さん(33歳)
出身校:東京大学 法学部
現在の勤務先: NHK報道局ディレクター

——人工知能科学研究科で学ぼうと思った理由は?

AIによって人間と社会の関係が大きく変わっていくのではないか、そうだとしたら、どういう方向へ変わっていくのかを見極めたいと思ったからです。世の中にはAIを敵視する向きもありますが、AIもまた人間が作った技術の一つ。批判するにしても賞賛するにしても、まずはその実態を正しく理解する必要があり、それによって違った世界が見えてくるかもしれないという期待もありました。また、テレビ局で報道の仕事をしている者として、メディア業界にAIがどのように実装されていくのか、それによって働き方がどう変わるのかということにも興味がありました。

——実際に授業を受けてみて、どのようなことを感じましたか?

授業は基礎的な知識を学べる講義や実習科目も充実していて、文系の人間でも何とかついていけるカリキュラムになっています。また、実際に手を動かしてプログラミングを行うことも多く、本を読むだけでは体感できない世界に足を踏み入れることができます。1年次の「特別研究」ではAIで日本語を解析する自然言語処理の基礎を勉強しました。自分がボランティアで関わっている出版社のデータを使って分析を進めていたのですが、先生からの勧めで、人文科学とコンピュータシンポジウム「じんもんこん2020」で研究を発表する貴重な機会を得ました。

——仕事と学業の両立はうまくいきましたか?

もともと読書や勉強が好きで、仕事をしながら大学院に通ってみたいという願望がありました。けれども、仕事との両立はなかなか難しいですよね。その点、当研究科の授業は平日の夜間と土曜を中心に開講されるため、これも受験を決めた理由の一つになりました。実際には、コロナ禍ですべての授業がオンラインになったので、通勤電車の中で授業の配信を見たりして、スキマ時間を使いながら意外に多くの授業を受けることができました。学生同士の交流についても、直接顔を合わせる機会が少ないぶん、Slackでこまめに情報交換をしています。さまざまな業種の方と出会うことができ、友人もたくさんできました。

——大学院で得た知見を今後どのように活かしていきたいですか?

1年次の勉強を終えて分かったのは、AIは私たちの仕事を奪ったりするものというよりは、むしろ、人間の可能性を広げる力を秘めている技術だということです。自分が携わるメディア業界にAIを実装すれば、人間がより深い、クリエイティブな仕事に集中することができるはずです。そんなふうに自信を持って言えるようになったことも、大学院で学んだ成果かもしれません。修了後もさらに知見を深め、取材や番組づくりはもちろん、将来的には放送局の組織改革にも活かすことができればと思っています。

研究成果をキャンパスの無人店舗で活用

M.U.さん(25歳)
出身校:立教大学 現代心理学部 心理学科
以前の職業:百貨店

——人工知能科学研究科で学ぼうと思った理由は?

立教大学を卒業後、百貨店に就職して婦人雑貨売場の実務を担当していたのですが、発注や在庫管理の方法が想像以上にアナログで、手間と時間がかかるなぁと感じていたんです。相応のシステムを利用すれば効率化できそうなものの、文系の私にはそのあたりの知識や経験が全くなくモヤモヤしながら仕事をしていました。そんななか、IoTやAIなどの用語を頻繁に耳にするようになり、これらの技術を活用すれば小売業界全体の成長・発展につながるかもしれないと思ったことがAIに興味を持ったきっかけです。また、当研究科では、エンジニアだけでなくAIの活用法を企画提案するプランナーやプロデューサー的な人材も育てるということで、文系の私にも挑戦できそうだなと思いました。

——実際に授業を受けてみて、どのようなことを感じましたか?

入学当初、数学の授業などは正直ちんぷんかんぷんで不安を感じましたが、理系出身の学生が自主的に勉強会を開いてくれたり、Slackで質問し合ったりと、他の学生の力を借りながら徐々に理解できるようになりました。先生方の丁寧かつ熱心なご指導はもちろん、学生同士の連帯感が強いことも当研究科の特徴かもしれません。また、私のようにプランナーやプロデューサーを目指す場合、すべての授業の内容を完璧に理解しなくても、基礎的な知識さえきちんと身に付けておけば大丈夫なのかなと感じています。

——研究テーマについて教えてください。

百貨店勤務の経験から、リテール分野における時系列データ分析をテーマに研究を進めています。1年次には、海外のECサイトが公開している顧客の購買データを利用して、ユーザーが次にどの商品を買うのかといったことを予測しました。またこの研究内容を活かして、立教大学のキャンパスに無人店舗を設置するプロジェクトにも関わらせていただいています。目標は、商品の発注や在庫管理などができるシステムの構築です。自分の研究を実社会の中で活用できるのはとてもやりがいがありますね。

——大学院で得た知見を今後どのように活かしていきたいですか?

卒業後は、データアナリストが必要になるであろうIT企業やeコマースを運営している企業で働きたいと思っています。とにかくAIについて知れば知るほど、こんなことができるんじゃないか、こんなふうに活用すればもっと世の中が便利になるんじゃないかというアイデアがどんどん湧いてくるんです。自分の強みを活かして、自分にしかできないことをやりたい。この気持ちは大学院で学んだことでより強くなった気がします。

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